No.320【ノルマの代償】

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ファミレスでのアルバイトも数ヶ月が経ったころ、世間にはクリスマスの季節が近づいていた。

大した手当てが付く訳でもないのに、その店舗でも〈クリスマスケーキ〉の予約販売が開始されていて、社員は勿論のこと僕達アルバイトにまで〈ノルマ〉が掛けられた。

バックヤードには予約実績の棒グラフを書いた紙が貼り出されていて、よりケーキを売っていないと、アルバイトと言えども肩身が狭く感じるのである。

ましてや社員のプレッシャーは尋常ではない。

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やがて〈クリスマスイブ〉がやって来た。

店には朝から大量の予約ケーキが搬入されてきて、1日中、受け取りに来るお客様で混雑した。

社員もアルバイトも手配りできるケーキは持って帰ったのだが、断トツの数の予約を取った1人の男性社員はクルマを用意してケーキを取りに来ていた。

明くる25日も煩雑とした1日が続いたが、なんとか〈クリスマスケーキ商戦〉が終った。

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やれやれと、皆んながホッとしていたところへ妙な噂が飛び込んできた。荒川河川敷に〈クリスマスケーキ〉が大量に廃棄してあるのが見つかったというのだ。そのケーキのメーカーがここのファミレスチェーンのものだという。どうやら抜群の売上を達成したあの男性社員の仕業のようだった。

彼は成績を伸ばす為に、架空の予約客をデッチ上げて〈自腹〉で代金を支払ったらしいのだ。

河川敷に投げ捨てられた〈大量のクリスマスケーキ投棄事件〉が会社のイメージに良からぬ影響を与えたことは否定できない。

当時は3大ファミリーレストランが熾烈つな闘いを繰り広げていた時である。

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彼は間もなく解雇された。

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