No.330【紹興酒】

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南に位置する台湾第2の都市〈高雄〉でのディナーメニューは広東料理だった。

〈紅焼排翅〉
〈広東炒麺〉
〈蟹肉炒蛋〉
〈焼売〉
〈蠔油牛肉〉
〈咕老肉〉

次々に出てくるどの料理も、日本の中華料理よりも少しだけ味付けが濃くて〈八角〉の薫りがするものが多い。そして使う脂が総て〈ラード〉なので一瞬鼻につくのだが、慣れてくるといかにも本場の味がして〈台湾〉を感じるのだった。

ビールから始まった飲み物はいつしか〈紹興酒〉に移っていった。

小学校の校長先生をやっていたという現地ガイドの呂さんが、大きな声で台湾式紹興酒の飲み方を伝授してくれている。

「はい、皆さん!台湾の紹興酒の飲み方ね、こうするよ❗️台湾人レモン入れるよ!」

そう言うと、グラスに紹興酒を6分目くらい注ぎ、輪切りにしてあるレモンに箸を2本差し込んでグラスの上に持っていき、箸をそれぞれ逆方向に捻り始めた。レモンと言っても皮の色は緑色なので、あれは〈ライム〉なのかもしれない。

箸で目一杯に搾られたレモンからはボタボタと果汁が滴り落ちていく。

「はいっ❗️これで出来上がりよ!あなた飲んでみて下さい」

そう言って、呂さんはそれを僕に薦めてくれた。氷を入れるものだとばかり思っていたので訊いてみた。

「謝々!呂さん、氷は入れないんですか?」

「台湾人、氷入れないね!」

よしっ!郷に入らば郷に従え、台湾に入らば台湾に従えだ。僕はそのまま飲んだ。

《んっ❗️・・これは旨いぞっ❗️》

冷やすよりも紹興酒の味がシッカリと味わえて、レモンがサッパリとしているのでいくらでも飲めるではないか!日本酒だって〈通〉は一肌燗とか冷で飲むのだから・・僕は台湾式紹興酒が痛く気に入ったのだった。

・・・・・・・

すっかり〈紹興酒派〉になった僕は、日本に帰って来てからも専ら紹興酒ばかりを飲む訳なのだが、当時の日本には、まだ〈ライム〉の流通が少なくて黄色いレモンしか見当たらないのだ。

レモンを輪切りにして箸で絞り上げるのだが、黄色いレモンの皮は全くの根性無しですぐに千切れてしまって、全然、台湾のようにはいかなかったのであった。

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