No.405【弁当】

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中学では給食が無かったので、皆んな〈弁当〉を持って来ていた。

只、学校のすぐ近くに自宅がある生徒は、昼時に限って家に帰って御飯を食べることが許されていた。

僕のクラスには家に帰って御飯を食べる男子が何人かいた。

その中の1人が〈弁当〉に異常な程の憧れを持っていた。

・・・・・・

4時限目の授業が終ると待ちに待った〈弁当〉の時間だ。

トイレに行って教室に戻って来たら、3人の女子が机の前に集まっていて僕にこう言った。

「ねぇねぇ今ね、K君がね、〇〇君の弁当の蓋を開けて中身を見てね、蓋を閉めて家に帰っていったよ❗️」

僕の弁当の中身を勝手に覗いたらしいのだ。

そう言えば、K君は自宅に御飯を食べに帰る前に、弁当を食べようとしている僕のところへ来ては旨そうだとよく言っていた。K君は〈弁当〉に憧れていたのだと思う。

覗くヤツもいれば、粗末な〈弁当〉を隠して食べる女の子もいた。

そしてまたこんな猛者もいた。あの頃は食べ盛りだ。アルミ製の大きな四角い弁当箱に、御飯をこれでもかっ!というくらいに詰め込んで来るヤツがいたのだ。

御飯が富士山のようになっていて、蓋も変形していたくらいだ。

そいつが嬉しそうに御飯に箸を立てて食べようとした時、圧縮された四角い御飯がゴッソリと持ち上がり、「ボキッ!❗️」と箸が折れたことがあった。煉瓦のような御飯なのだ。

それくらい御飯が詰め込んである〈弁当〉にも拘わらず、彼には到底満足出来る量ではなかったのだった。

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