No.16【冬の日のランチ】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.08.18 当時、カップヌードルは発売されて間もない頃だったので、まだ珍しくてちょっとした特別感があったものだ。その日は大変に寒くて、店の窓から見える外の景色は雪で真っ白だった。ガラッ!と引き戸を開けて馴染み客のおじさんが入ってきたのだが、手にはカップヌードルを持っていた。「今日は寒いねぇ。社長!ピアノ売れとる?楽器屋はええなぁ楽しそうで」「まぁ、ボチボチよ。そりゃそうと、それなに?」「ありゃっ、知らんの?カップヌードルよ。湯かけただけで食えるんよ、これが」「ほう~」「社長!湯、ちょうだいや」常連さんはそういうと、カップヌードルのフタを半分剥がして、ストーブの上にあったヤカンの湯を注ぐ。「社長、これで3分待つだけよ。冷めたらいかんからここへ乗せとこっと」といってカップヌードルをストーブの上に置いたのだった。3分も経っただろうか「もう、ええかな」といって常連さんがカップヌードルを持ち上げた瞬間、熱で溶けた底がストーブに張り付いてしまっていて、底が抜けてしまったのだ。「ジュジュジュバ~!」と中身が全部ストーブにかかってしまって、ストーブは麺とスープで消化器を掛けたようになり、店は煙だらけになったのだった。(最近カップヌードルの容器は紙質になったが、ながらくは発泡スチロールだった。)
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