No.475【明細書】

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クルマ好きの友人がいた。

特に外国のクラシックカーが好きで、予てから、イギリス製のとあるクルマが欲しくて仕方がなかった。

だから長年探し続けていたのだが、やっとお眼鏡に叶った1台が見つかったのだった。売ってやるというオーナーが現れたのだ。

ところが、彼が想定していた価格を上回る価格を提示してきたのである。しかも、先方のオーナーは現金での取引を希望している。コツコツと貯めた金額ではとても届かない。でも、どうしてもそのクルマが欲しい。

考えた末にたどり着いた結論が借金をする、ということだった。銀行のカードローンからの借り入れと、サラ金にまで手を出して、彼は3桁のお金を工面したのである。

そうして彼は憧れのクルマのオーナーになり、夢のような生活が始まったのであった。

・・・・・・・

ところがある日のことである。彼は浮かない顔をして僕に話し掛けてきたのだ。

「やられたよ・・・」
「えぇ? なにが?」

聞けばこうだ。

ある朝起きると、テーブルの上に皺を伸ばした明細書が置いてある。見れば、それは昨夜仕事から帰ってきた時に、丸めてゴミ箱に捨てたはずの〈サラ金の明細書〉だったという。

「カミさんが、もう、1週間も口を利いてくれないんだよ・・・」

と、彼は情けなさそうに呟いた。

憧れの愛車との薔薇色の生活が、皺クチャの紙切れひとつで吹っ飛んでしまったのだった。

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