No.645【中華そば】

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家内と2人で郊外の道をドライブしていた。

昼の時間が近くなってきたのだが、周りは山ばかりで、行けども行けども飲食店が見当たらない。街に出るまで我慢するしかないのかなと諦めかけていたところ、前方に1軒の店が見えてきたのだった。

「おっ!なんか店があるぞ❗️食い物屋かぁ?」

「えっと~・・あっ❗️〇〇食堂って書いてあるよ❗️」

「よしっ!入るか❗️」

渡りに船とばかりにクルマを駐車場に入れる。

・・・・・・・

「良かったなぁ、食べ物屋があってぇ」

「うん」

・・・・・・・

店に入って席に着く・・・早速メニューを見てみる。

「えぇ~っと・・・・・・」

「父さん・・1番安い〈かけうどん〉が¥650―だってぇ」

「〈かけうどん〉が¥650―❗️〈中華そば〉が¥800―かぁ」

田舎道の店にしては結構な値段じゃないか・・家内は明らかに不満そうな表情を浮かべている。1番安いものを注文するのはみっともないなぁと思ったので、見栄を張って、僕は〈中華そば〉を頼むことにした。

「僕は〈中華そば〉にするわぁ」

「じゃアタシは〈肉うどん〉にするぅ」

「〈肉うどん〉は¥850―だぞぉ・・・まぁいいや、すいませ~ん! お願いしま~す❗️」

「あっ!やっぱりアタシも〈中華そば〉にするぅ」

僅か¥50―の差にビビった家内は急遽オーダーを変更した。店員の女性にオーダーを通す。

「〈中華そば〉2つお願いします」

・・・・・・・

仮にも¥800―の〈中華そば〉だ。案外こんな店が名店だったりするのだ・・・期待出来るかもしれないぞ。
10分は待たされただろうか・・・やっと〈中華そば〉が運ばれてきた。

しかしそれは、お世辞にも旨そうな顔をしている〈中華そば〉ではなかった。少し大きめの丼に盛られたその〈中華そば〉のトッピングには、モヤシと小さな叉焼とメンマが乗っているだけで、とても¥800―の〈中華そば〉には見えないのだ。

いや、こんな田舎なのに¥800―で勝負している〈中華そば〉なんだ。案外、旨いに違いない。そう思いながら食べ始めたのであった。

「・・・・・・・」

「・・・」

2人は無言で食べ続けた。

・・・・・・・

完食した後、税込価格の¥1.600―を支払って店を出た。

・・・・・・・

「おいっ❗️¥800―は高過ぎるよなぁ」

「そうよ❗️」

「特段に旨いわけでもなかったしなぁ~よく潰れずにやってるなぁ」

「潰れるかもよ!・・・ ホントはアタシ、値段を見た時から食べずに店を出たかったわ❗️」

・・・・・・・

大して旨くもない¥800―の〈中華そば〉・・・思い出しては日増しに腹が立ってくるのである。

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