No.76【ラジコン機】

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浜松の遠州灘には中田島砂丘という所があって、休日ともなると大勢のラジコンマニアがやって来て飛行機を飛ばしていた。
初心者からベテランまで色々な「パイロット」がいた。
ラジコンクラブの会長が操縦する零戦は、それは華麗な飛行を披露してギャラリーの喝采を浴びていたのだが、問題は初心者である。練習機ならまだしも、下手なくせにカッコ付けて上級者用のスタント機を飛ばす輩がいるのだ。
模型飛行機といえども高性能なエンジンを搭載していて100キロ近い速度が出るのだ。初心者のスタント機が宙返りや霧もみ飛行などを試みるわけだが、よく失敗して海に墜落させたり、ギャラリーの近くに突っ込んできたりするのだから、危なっかしくていけない。初心者に曲技飛行なんてドダイ無理なのだ。
かくいう私もラジコン機に憧れてしまって、とうとう飛行機一式を買ってしまった。初心者用の小型の機体だ。
部屋でコツコツと組み立てて、ようやく完成の日を迎えた。当時は、「ENYA」「OS」という2大模型エンジンメーカーがあったのだが、私はENYA製を選んだ。プロポと呼ばれる送受信機などはFUTABA社製にした。
さて、初飛行の日、友人と2人で中田島砂丘までやってきて飛行の準備に取り掛かったのだが、なかなかエンジンが掛からない。
悪戦苦闘の末にやっとエンジンが掛かったので、いよいよ初飛行に挑戦することになった。
「いいかぁ~行くぞ~っ!」
友人はそう言うと手に持っていた機体を空に向けてス~ッと手投げ発進した。
「ビ~~~ン」
大きなエンジン音と共に機体は徐々に上空に上がっていった。
「よ~~しっ!」
友人が歓声を挙げる。
そして高度が30mほどになったころだろうか、機体が突然グルグル回りだして落下し始めた。
「わぁ~~~っ❗️落ちるぞ~!」
まったく制御できない!
理由が解らないままに送信機のスティックをイジくっていたら機体は真っ逆さまになって砂丘に落ちていったのである。
「ドシャッ‼️」
なにかが飛び散るのが見えた。
僅か一分間ほどの飛行だった。慌てて駆け寄っていくと、主翼は折れて、先端のエンジンは砂まみれになっていた。
2ヶ月掛かって作った飛行機があっ!という間に木っ端微塵になってしまった。
悲惨な状態になった機体を回収してベテランに見てもらった。
「こりゃ、前が重すぎてバランスが悪いだらぁ。オレでも飛ばせんで」
と、浜松弁で解説してくれたものだ。他人の下手な操縦を笑った私が、今度は笑われた。あれから一切ラジコンはやっていない。

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