No.207【ポインター犬】

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伯父さんの趣味は〈山鳥〉を撃ちに行くことだった。狩猟免許を取って、ポインターという猟犬を3頭ほど飼っていた。

よく山撃ちに入った時の話をしてくれた。

山鳥を見付けてくれるのは猟犬だ。犬を連れて山の中を歩いていると、猟犬たちの動きが忙しくなってきてやたらと辺りの匂いを嗅ぎ始める。獲物に近づいたという徴しだ。

いよいよ近くになると犬の動きは忍者のように静かになってきて、やがて体勢を低く構えてピタッ!っと止まって微動だにしなくなる。

その犬が凝視する直線上の先に獲物が潜んでいるのだ。

猟師は散弾銃をその方向に合わせて構え、次の瞬間、犬に指示を出す。

「行けっ❗️」

「バウバウバウバウッ❗️」

犬は山鳥を目掛けて突進する。

「パタパタパタパタッ❗️」

不意を突かれた山鳥が飛び立つ。

「パ~ン❗️」

構えていた所に飛び出してくる山鳥は一発で仕留められてバサッと茂みに落ちる。

これが優秀な猟犬の場合なのだが、犬の中にも色々なのがいて、いつもこのようにはいかないんだと伯父さんはコボしていた。

能力に劣る犬がいるのだ。

さて、そんな犬でも一犬前に山鳥は見付ける。匂いを嗅ぎ始めて暫くしたら、一方向を向いてピタッ!っと止まった。

猟師は犬の方角に合わせて猟銃を構える。

「行けっ!」

「ワンワンワンッ❗️」

「ポロポロポロポロッ❗️」

するととんでもない方向から山鳥が飛び立つ。慌てて構え直してももう撃てない。逃げられるのだ。

何度もそんなことがあったそうだ。

「なんで馬鹿犬を連れて行くん?」

伯父さんに訊いてみたことがある。

「なんかなぁ、コイツは憎めんのじゃ」

伯父さんはそう言いながら、愛おしそうにそのポインターの頭を撫でた。

(〈ポインター〉スパニッシュ・ポインターがルーツで、イングランドが原産。正式名、イングリッシュ・ポインター)

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