No.257【果し合い】

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中学には〈番長〉がいて、色んなヤツにチョッカイを出しては皆んなから煙たがられていた。

その日もクラスの女の子に因縁をつけて嫌がらせをしているのだが、皆んなは見て見ぬふりをしている。

いよいよ女の子が泣き出したのを見た僕は、堪り兼ねて番長に啖呵を切ってしまった。

僕の親父が若い頃、街のならず者達に喧嘩を売って半殺しの目に会ったことがあるという。どうやら親父の性分を譲り受けたらしい。

ともあれ、番長に楯突くなどとは前代未聞の出来事である。クラスにシンとした緊張が走った。

「おいっ!お前エエ加減にせえよっ❗️」

「なんじゃとぉ❗️」

番長は僕の胸ぐらを掴んで脅しを掛けてきたのだが、ここで怯むわけにはいかない。

「エエ加減にせぇ言うとるんじゃっ❗️〇〇さんに謝らんかいっ❗️」

僕も番長の胸ぐらを掴み返して睨み返してやったのだが、本当はヤバイことになったと大いに後悔もしビビッてもいたのだ。

あわや殴り合いが始まろうとしていたその時、休憩時間が終わったチャイムが鳴ったのである。

『キンコ~ン・・カンコ~ン』

「お前どうなるか分かっとるんかっ❗️放課後、裏山へ来い❗️』

番長が凄んでそう言った。

「おぉっ❗️決闘かぁっ❗️お前こそ待っとけよっ❗️」

負けじと言い返した僕なのだが、胸の中には後悔しかなかったのだった。

・・・・・・・

授業が始まっても考えるのは〈決闘〉のことばかりである。

《あいつがこう殴ってきたらこう返してこう蹴りを入れてやる・・・》

頭の中で何度もシミュレーションを繰り返す僕がいた。

《こう見えても体操部の副キャプテンだ。腕力では勝っている・・》

そんなことを思っては自分を奮い立たせたりしたのだが、喧嘩は腕力ではない。気迫とハッタリと慣れがものを言うのだ・・・

・・・・・・・

やがて最後の授業が終わり、意を決して裏山に行こうと席を立った時である。ユックリと〈番長〉が近づいてきた。

そして、こう言った。

「ゴメン・・ワシが悪かった、決闘は止めようやぁ」

《えぇ~っ❗️嘘だろっ!》

僕は驚いたと同時にホッと胸を撫で下ろしたのだった。

「えぇよえぇよ、分かってくれたんなら」

そう言って〈番長〉の肩を叩いたのである。

〈番長〉が去ったあと、いくら腕力があったとしても、喧嘩慣れしていない僕がビビりまくっていたことなどは露ぞ知らない友達が集まって来て僕を讃えてくれた。

「おいっ!お前勇者じゃのぉ❗️」

こうして〈世紀の大決闘〉は行われることなく、喧嘩は無血の内に終わったのである。

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