無論、ショパンは素晴らしいのだが、僕はヴェートーベンのピアノソナタが好きだ。
ある時、YouTubeで大好きな〈ワルトシュタインソナタ〉の聴き比べをしていた。
すると、PC画面右側の〈お薦め動画〉のサムネイル画面に〈ソナチネの動画〉が出てきたのだ。
《ひゃ～ソナチネかぁ～懐かしいなぁ》
僕は以前ピアノ調律の仕事をしていたので、演奏はさておき、楽器店の音楽教室から流れてくる〈ソナチネ〉のメロディーには慣れ親しんでいたのである。
〈ソナチネ〉は練習曲が殆んどなのだが、短い曲の中にピアノ音楽の基本が爽やかに表現されていて、練習曲だからといって決して侮ることが出来ないような魅力があった。誰もが耳にしたことがある、親しみ易くて美しい作品が多いのだ。
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僕はYouTubeの〈ソナチネ〉を聴いてみることにした。
数ある〈ソナチネ〉の中でも、特に印象深い旋律で有名な数曲をピックアップしてみた。
〈ソナチネ１番op.20―1：クラーウ〉
〈ソナチネ５番op.55―2：クラーウ〉
〈ソナチネ７番op.36―1：クレメンティ〉
〈ソナチネ９番op.36―3：クレメンティ〉
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〈ピアノ〉から〈フォルテ〉へ、〈長調〉から〈短調〉へと変化する美しい旋律・・・・
そうしてYouTubeから流れてくる〈ソナチネ〉の旋律を聴いていると、当時、音楽教室のピアノ講師をしていた僕の彼女が、課題曲の〈ソナチネ〉を生徒達に教えている姿が鮮やかに甦ってきたのである。〈ソナチネ〉の旋律は、彼女と過ごした遠い日々のことを思い出させた。そして聴く程に切なくなってくるのであった。
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そう言えばあの頃、グランドピアノが設置してある行きつけのスナックで、デモ用に覚えたヴェートーベンの〈月光ソナタ第１楽章〉を、彼女のリクエストでよく弾いていた僕である。
今〈ソナチネ〉を聴いて彼女を感じるように、彼女が〈月光ソナタ〉を聴いた時に、僕のことを思い出してくれることがあるのだろうか・・・
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PCのスピーカーからは、クレメンティの〈ソナチネ９番・第一楽章〉の旋律が流れている。
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