No.287【拉麺とカレーライス】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.09.24 浜松にある、某ピアノメーカーの〈ピアノ調律師〉を養成する学校に在籍していた時である。我々生徒は全国の特約楽器店から派遣されていて、全員が寮生活を送っていた。女の子も何人かいたのだが、さすがに少し離れたところに別の寮が用意された。寮では1部屋に2人が入った。相部屋になったヤツと僕とは馬が合ったので、少しのイザコザもなく寮生活が続いていたのだが、彼とはひとつだけ意見が合わないことがあったのだった。・・・・・・・「おい、タマの日曜日なんだから街に出ようぜ」日曜日の朝、彼は市内に遊びに行こうと誘ってきた。「う~~ん、寮にいてもなんにもないし、そうするかっ!」2人はいつもこんな感じで街に遊びに出ていた。・・・・・・・男2人が街ブラしても、取り分け楽しいことがある訳でもない。だから楽しみといったら〈昼飯〉くらいなのだ。「おい、昼飯、カレー喰おうぜっ❗️」彼はいつもそう言っていた。カレーライスが大好きなのだ。勿論、僕もカレーライスは好きだ。好きなんだけれどもラーメンのほうがもっと好きなのだった。「えぇ~っ?ラーメンにしようよ」「また、ラーメンかよぉ。先週もラーメン喰ったじゃないか~今日はカレーにしようぜっ❗️」「ラーメンにしようよ。味噌バターラーメン❗️」こうして、ラーメンだぁ、いやカレーライスだぁと、いつも押し問答になるのである。でも、彼は実に優しい性格の持ち主なのだ。殆んど僕の意見を受け入れてはラーメンに付き合ってくれたのである。例えば10回の内7回はラーメンを食べたという感じなのだ。カレーを食べた記憶はホンの数回しかない。・・・・・・・やがて調律の学校を卒業して、皆んなそれぞれの楽器店に帰っていった。・・・・・・・あれから数十年が経つ。彼は元気でいるのだろうか?今でもカレーライスが好きなのだろうか・・・もしも再び会うことがあったなら、その時はカレーライスを食べようか。
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