No.318【大車輪】

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高校の県大会予選に出たことがある。

僕は体操部に入っていた。2年生なのだが団体戦のレギュラーメンバーとしてその大会に出場した。

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〈床運動〉〈跳馬〉と試合は順調に進んでいって〈鉄棒〉の演技の時間がやってきた。団体戦は4名1チームで競われる。1番手の先輩の演技が終って得点が出た。

〈8.35・・・〉

当時は10点満点から減点していくというルールであったが、8.35という得点はなかなかのものだ。

いよいよ僕の番が廻ってきた。心臓がバクバクいって緊張がピークに達する。

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手に滑り止めの〈炭酸マグネシウム〉をまぶして度胸を決めた。

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僕は鉄棒の真下まで行って深呼吸をし、逆手でサッと鉄棒に飛び付くと、すぐに〈蹴上がり〉から逆手車輪に入った。

逆手車輪で1周した頂上で順手車輪に以降し、下に向けてグ~~ンと3分の2程回転したその時だった。滑った手が鉄棒から離れた。

身体が宙を舞っている。体育館の景色が飛んで見える。次の瞬間だった。

「バ~~ン❗️」

頭が少し下向きで、背中からマットに叩きつけられた。

場内がどよめいた。

30秒以内に再開すれば減点はされても演技は成立する。

先輩たちに迷惑は掛けたくない。少ない点数でもいいから合計点の足しにしたい。

背中がチョッと痛いくらいで怪我はなさそうだ。僕はマットから起き上がって再び鉄棒に飛び付いた。すると審判員の1人がダダダッと駆け寄ってきて僕にしがみついて言った。

「君っ❗️頼むからもう止めてくれっ❗️」

また落下するのではないかと心配しているのだ。審判員の指示には逆らえない。僕は再び演技することを諦めた。

僕の鉄棒の得点は〈3.5〉だった。

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結局、団体戦の結果は2位であった。僕が鉄棒で落下せずに普通に演技をしていたら、おそらくは優勝していただろう。それほど僅差の2位だったのである。

(逆手:自分から手の平の内側が見える向きで鉄棒を握る持ち方・・・順手:自分から手の平の甲が見える向きで鉄棒を握る持ち方)

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