娘の結婚式は〈チャペル形式〉だった。愛犬の黒ポメラニアンも列席する楽しい結婚式であった。
・・・・・・・
家内は寂しいのか嬉しいのか、チョッとは涙を流していたが僕は泣かなかった。
何故かと言えば、娘にピッタリの彼氏、いや、新郎だからなのだ。実にお似合いの幸せそうなカップルだ。だから泣くどころか父親としてこんなに嬉しいことはないのだ。別段、強がりでもなんでもない。
ただ１つだけ気を揉んでいたのが指輪交換のあとの〈誓いのキス〉だ。
父親として新郎にヤキモチを妬いている訳ではないのだが、いくら目出度い結婚式だからといって、娘の〈キス〉する姿を目の前で見せられてなんともない父親なんているのだろうか・・いやいや嫉妬なんかではないのだ。見ているこっちが恥ずかしいではないか・・
大体が、日本人の〈人前キス〉なんて、ドダイ似合いはしないのだ。日本人がいくら真似したって、〈キス〉や〈ハグ〉が挨拶のような西欧の文化慣習には馴染める訳がないではないか・・
・・・・・・・
やがて結婚式も終盤に差し掛かって、いよいよ〈指輪交換〉のセレモニーがやってきた。
《次はチューだな。まぁいいか》
そう思いながら２人を見守っていたのだが、なんと〈チュー〉が無かったのだ。大恋愛結婚なのにおかしいぞ・・・
・・・・・・・
式が終った後に娘に訊いてみた。
「おい、誓いのチュッチュ！が無かったじゃないか」
すると娘がアッサリと言った。
「なんで人前でキスしなきゃいけないの！」
《おっ！天晴れ大和撫子～っ❗️》って言いたいところなんだが、じゃぁ、なんでチャペルなんだと思った・・・ま、いいか。
コメント