No.327【海釣り】

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子供の頃から山間部で育ってきた僕は〈海〉には全く縁がなかった。遊びのフィールドは〈山〉と〈川〉ばかりだった。

だから〈魚釣り〉は専ら〈川釣り〉ばかりで、大人になるまで〈海釣り〉を経験したことがなかった。

結婚してから移り住んだ所が海に程近いところだったのだが、結局、3人の子供が生まれるまで〈海釣り〉に行くことはなかった。

〈川釣り〉しかやったことがない僕にとって、〈鮎〉〈山女魚〉〈岩魚〉〈鰻〉以外の川魚はウンザリしていてもうどうでもよかったのだが、海の魚には食べる意味でも憧れがあったし、日頃スーパーに並んでいる〈鯛〉や〈アジ〉や〈鯖〉などが、生きた状態で釣れることに興味を感じていた。

1番下の子が幼稚園の年長になった頃に、一念発起して、初めての〈海釣り〉に挑戦してみることにした。

先ずは初心者用の〈海釣りガイドブック〉を購入して基礎知識を勉強したあと、釣具店に出向いて簡単な道具を買い揃える。

釣具店の店員さんに、今が旬だからと〈ハゼ釣り〉を薦められたのでそうすることにする。初心者にも向いているとのことだった。

〈ハゼ釣り〉は「投げ」という釣り方をする。仕掛けは、リール竿に天秤という重りを付けて、その先にハゼ用の針を2・3本セットするという簡単なものだ。

餌は〈ゴカイ〉とか〈青虫〉とか〈本虫〉とかいう、いずれもミミズのようなものだった。

竿を後ろから前へ、剣道の面を打つように振って糸を遠くに投げるのだ。
天秤の重りと一緒に糸は「シャ~~ッ!」と飛んで行って、遠くで「チャポンッ!」と水面に落ちるのだ。

そうしたらリールをユックリと巻いていって糸をピンと張らせる。魚の当たりを分かり易くするためだ。

糸が張っていたら魚が餌を突っついた時に竿先がピクピクと反応するからである。

初めての〈ハゼ釣り〉は面白いように釣れた。家内も子供たちも大喜びだった。これで我が家の〈海釣り〉へのスイッチが完全にONになってしまった。

そして、釣って帰った〈ハゼ〉の味が絶品で、天麩羅は〈キス〉よりも旨いのだ。

・・・・・・・

それからというもの日曜日となると釣りに出掛けた。「サビキ釣り」で〈小イワシ〉を釣りに行った時には、予期せぬ〈鯖〉や〈チヌ(黒鯛)〉が釣れたりして大いに盛り上がった。

チョッと遠方の島まで足を伸ばして〈アイナメ〉や〈アオリイカ〉を釣りに行ったこともある。

・・・・・・・

そうして、暫くは楽しい〈海釣り〉の日々が続いていたのだが、ある時を境に段々と魚が釣れなくなってきたのだった。

潮の満潮干潮もちゃんと調べて行くのだが、始めの頃のようには釣れないのだ。

最初の〈爆釣〉は、あれは所謂ビギナーズラックだったのだろうか・・・

だから徐々に釣りから足が遠退いていって、気が付いた時には、もうすっかり釣りを止めてしまっていた。

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