No.377【道案内の老人】

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今は〈スマホ〉があるので人に道を訊くことはまず無いが、昔は地図を頼りに探したり、人に尋ねたりしながら目的地を目指したものである。

若い頃、仕事でクルマを走らせていた時、どうも道に迷ったらしくて、目的のウチにたどり着けないでいた。

迷っているうちに、クルマは田舎道へと入っていた。先輩に書いて貰った手書きの地図とニラメッコしてもどうにもよく分からないのだ。

《確かにこの近くなんだけどなぁ》

そう思いながら徐行していると、数メートル先に、縁側に座っているおじいさんが見えたので、クルマから降りて道を訊いてみることにした。

「こんにちは~・・・」

「はぁ~こんにちは」

「あの~チョッと道をお尋ねしたいんですけどぉ・・」

「ほぉほぉ」

「〇〇さんちがこのへんにあると聞いてきたんですけど・・」

「ほぉほぉ、〇〇さんちならのぉ、ここを真っ直ぐ行きなさったらありますでぇ」

《おう!この道で合ってたんだ》

「あっ!そうですか!有り難うございます!・・あのぉ、クルマでどのくらいですかねぇ?」

すると老人が答えた。

「そうじゃのぉ・・クルマで1キロぐらいじゃろうて」

「あぁそうですか、クルマで1キロですね・・ありがとうございました」

所要時間を訊いたのに、おじいさんは距離数を教えてくれた。

クルマだろうが歩きだろうが1キロは1キロなのだった。

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