No.395【泥ダンゴ】

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子供の時の遊びの1つに〈泥ダンゴ作り〉があった。

友達数人で集まって、誰が1番綺麗で立派な〈泥ダンゴ〉を作るのかを競うのだ。

当時は、道路を舗装するということが珍しい頃で、家の周りはまだ土の道ばかりだった。

だから〈泥ダンゴ〉の材料は目の前に沢山ある訳なのだ。

さて、〈泥ダンゴ〉を作るには、先ずダンゴの芯になる基礎を作らなければならない。

芯には、粘りのある粘土質の土を使うのだが、何事も基礎が重要だ。皆、ここぞっ!と思う場所から土を採ってくる。

それに用水路の水を少し混ぜては練りあげて、粘土のようなものを作る。

そうしてピンポン玉くらいのダンゴが出来上がる。あまり大き過ぎると、後で磨きを掛けていく時にやり難いのだ。両手でスッポリ包めるくらいの大きさがベターなのだ。

そして磨きを掛ける前に、まず、その〈基礎ダンゴ〉をまん丸にしなければならない。チョッとでもイビツだと皆んなからの評価が落ちるのだ。
そして、〈基礎ダンゴ〉の出来具合に納得したヤツから、いよいよ磨きの工程に入る。

磨きは〈基礎ダンゴ〉に乾いた土を振り掛けて行うのだが、その土は粉のように細かい程良い。

振り掛ける土によって金色になったり銀色になったりするのだから土選びが重要になってくる。

「じゃ~ん❗️これ見てみ!すごいじゃろぉ」

友達が金色に輝く〈泥ダンゴ〉を自慢する。

「わぁ~スゴいのぉ~どこの土を掛けたん?」

「ナイショナイショ❗️」

「ケチじゃのぉ~教えてくれえや」

「ダメ~」

〈泥ダンゴ〉作りは結構真剣な勝負でもあるのだった。

そうして思い思いに、土を掛けては撫で、唾を掛けては撫でて丹精をするのだ。

それぞれに完成した〈泥ダンゴ〉は、それはそれは黒光りしていて、チョッとした芸術作品なのである。

光が当たると金色や銀色に輝く〈泥ダンゴ〉の品評会が始まるのだが、内心は、皆んな、愛情を注ぎ込んだ自分の〈泥ダンゴ〉が1番だと思っているのだ。

〈泥ダンゴ〉作りに没頭していたら。もう夕暮れになっていた。

皆んなは〈泥ダンゴ〉という「宝物」を持って家路につくのであった。

・・・・・・・

次の日の朝になった。机の上に飾ってある〈泥ダンゴ〉が気になるので真っ先に見にいった。

「❗️・・・」

そこにあるのは昨日までの〈泥ダンゴ〉ではなくて、乾いて白く変色した、卵の殻がヒビだらけになったような、見るも無惨な〈土の玉〉だった。

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