No.433【妻の帰宅①】

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クルマが帰って来た音がした。家内が、彼女の愛車〈スズキセルボ〉で帰って来たようだ。

玄関で靴を脱ぐ気配がする。

「・・・ただいま・・・」

居間の襖を開けてそう言ったままつっ立っている。なにやら元気が無い。何か言いたそうで言いかねている。僕はすぐに察しがついた。

「なんかあったんだろっ!・・・あっ❗️クルマぶつけたんじゃないだろうなっ❗️どうせキズでも付けてきたんだろっ❗️」

「・・・・・・左のバンパーがカパッ!と外れて・・」

図星なのである。長年夫婦をやっているとすぐに分かるのだ。

「わざとじゃないよっ❗️向こうが寄ってきたから・・」

家内はすぐに自己弁護の言い訳をする。

「なにやってんだよっ❗️いっつもキズ付けるよなぁ!」

そう言って僕はすぐにクルマを見に行った。

家内が言った通りに、左のバンパーのリップスポイラーが無惨にもカパッ!と剥がれているではないか!

「何回キズ付けりゃ気が済むんじゃ❗️」

ブツブツと僕の小言は暫く続く。

・・・・・・・

《まぁいいか・・・怪我もせずに元気で帰って来てくれたんだし、相手とぶつかった訳でもないしなぁ~》

そう思ったのは、翌日の朝だった。

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