No.473【天麩羅屋】

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数年前である。近くに〈天麩羅屋〉がオープンした。

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店の前をクルマで通ると、広い駐車場の回りには、客寄せ用の数本の幟が立っていて、〈ランチ¥650―〉という文字がヒラヒラと風になびいている。

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休日に家内を誘ってみた。

「お~い! 〇〇の先に〈天麩羅屋〉が出来ただろ? 昼に行ってみないかぁ? 」
「天麩って高いんじゃないのぉ?」
「それがなっ! ランチが¥650―なんじゃ!」
「えぇっ!安いのねぇ❗️行こう行こう」

安さに釣られて家内もその気になった。

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自宅から店まではそんなに離れてはいないので、クルマは程なく駐車場に到着した。店内に入るとほぼ満席だったが、カウンター席が丁度2名分空いていたので我々はそこに座った。

¥650―の〈ランチ〉は、〈ランチ〉と言えども天麩羅はミニコースになっていて、揚がった順に目の前に出してくれるらしい。そして、ご飯が(大・中・小)の3種類から選べるようになっていた。どれにしようかと迷っていると、ふと隣の客が食べ終った丼茶碗にご飯が半分以上残っているのが目に留まった。

《なんだよ、勿体ないなぁ、あんなにご飯残してぇ・・(大)なんか頼むからだよ》

先客が残したご飯を見て学習した僕は(中)を、家内が(小)を頼むことにした。

店員を呼んだ。

「すいませ~ん❗️オーダーお願いしま~す❗️」

返事がない。

「すいませ~ん❗️」

《ん~~?》

返事がない・・店内を見回すと、店員の姿がひとりもない。

暫くして、若い男の店員が、揚がった天麩羅を小さなバットに乗せて厨房から出てくると、カウンター席のお客に配りはじめた。

配り終るとまた厨房に入ろうとするので強引に呼び止めてオーダーを通した。

どうも人が少ないように感じる。店員が少な過ぎるのだ。暫く様子を見ていたら、厨房に1人、ホールと洗い場兼で1人・・・スタッフが2人しかいないのだ。

料理は大幅に遅れているし、下げものも溜まっているし、店が全く回っていないのだった。

注文した〈ランチ〉は20分くらいしてヤッコラサ出て来たのだが、〈天麩羅〉が乗っていない。訊けば揚げたてを後から追っかけで出すのだという。

何よりも驚いたのが盛られたご飯を見た時である。(中)のご飯が大きな丼に入っている。(小)のご飯でもかなり大き目な茶碗に入っている。そして双方ともに〈かき氷〉の如く、ご飯がギュウギュウ詰めの山盛りなのだ。

先程の隣の客のご飯は〈大〉ではなくて〈中〉だったのだ。もう常軌を逸した大盛ご飯なのである。

夫婦で呆れ返りながら〈天麩羅〉が来るのを待っていた。

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ところが、いつまで経っても〈天麩羅〉が出てこない。

結局、30分も掛かって総ての〈天麩羅〉が出てきたのだった。オマケにフリッターのようなその〈天麩羅〉が旨いくない、と言うよりも、素人以下に不味いのだ。

何から何までが考えられないようなレベルの〈天麩羅屋〉だった。

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その〈天麩羅屋〉は2ヶ月も営業したのだろうか・・・気が付いた時にはもう無くなっていた。

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