No.235【焼肉屋の裏メニュー】

Uncategorized




会社の上司に焼肉屋に連れて行って貰ったことがある。

小ぢんまりとした店なのだが、これが中々の老舗で、知る人ぞ知るという名店なのだった。

確かに旨い店だった。〈カルビ〉〈タン塩〉〈ロース〉〈ホルモン〉〈ユッケ〉などの定番は言うに及ばず、〈テールスープ〉〈ナムル・カクテキ・キムチ〉なども中々の味だ。〈冷麺・クッパ〉も抜群に旨いらしい。

常連客である部長に訊いてみた。

「部長~ここの冷麺、スゲ~旨いらしいじゃないですか~」

部長は得意げに答える。

「そりゃオメ~旨いさぁ~麺の歯応えなんか堪らんぜぇ。まぁそりゃ最後の〆に取っといてさぁ、いいもんがあるんだよ・・メニューには無えんだけどさぁ」
そう言うとママさんを呼んでこう言った。

「ママ、例のヤツ・・あるぅ?」

「あるわよぉ、部長さんのために取っといてあるわよっ!そいでさぁ、今日は豚のペ〇スもあるんだけど・・どぉかしら?」

《ペ〇ス❗️》

驚いている僕にママが言う。

「あらっ!こちらのオニイサン驚いてるけど、美味しいのよっ!食べてみてチョーダイな、共食いになっちゃうけどさぁ、ハハハッ❗️」

・・・・・・・

やがて運ばれてきたのは、ピンク色で棒状の〈豚のペ〇ス〉と、皿に盛り付けられた、白身だけの茹で玉子をスライスしたような物だった。

部長はご機嫌よろしくはしゃいでいる。

「よ~しっ!これこれ!旨め~んだよこれがっ!」

そう言うと、まず〈豚のペ〇ス〉を網の上に乗せて焼き始めた。

「部長ぉ~この卵みたいなのなんなんすかぁ?」
「おぅ、そりゃ豚のキン〇マだっ!」
「ええ~っ❗️キン〇マッ❗️」
「おうよっ!キン〇マの冷凍スライスよっ!」
「どうやって喰うんです?」
「そのまま辣油の塩ダレで喰やいいんだよ」

部長はそう言うと、早速に喰い始めた。何度もすすめられたのだが、生のキン〇マなんてどうにも食べることが出来なかったので、焼いて食べてみた。

「生が旨いのにオメ~勿体無いことするな~」

部長に窘められる。

焼けば多少は食べ易くなるだろうと思ったのだが、網に乗せるとトロトロに溶けてしまって、なんか余計に気持ち悪くなってしまった。そうこうしているうちに〈豚のペ〇ス〉が焼けたようだ。箸で取ってみるとなんだか堅い。
「部長ぉ~これ、興奮もしてないの堅いんですけどぉ」

「おぅ、しゃぶるようにして喰うんだよ」

〈豚のペ〇ス〉が、丸で骨があるみたいに堅いことを初めて知ったのだった。それにしても、部長が言う程に旨いものではなかったのだ。まぁ、高級料理や珍しい料理というものは、得てして〈ゲテモノ〉が多いということなのだった。

口直しにと、〆に絶品〈冷麺〉をご馳走になって店を後にした。

(ユッケ:まだO―157騒動が無かった頃の話)

コメント

タイトルとURLをコピーしました