No.604【チーフの自信作】

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勤務していたホテルの宴会料理はレベルが高かった。特に洋食が秀逸だった。

温かい料理を担当する〈ホット場〉と、冷たい料理を担当する〈コール場〉とに分かれているのだが、双方ともにいい料理を提供していた。

ある日〈ホット場〉のチーフが腕に寄りを掛けて〈グリンピースのポタージュスープ〉を作り、小宴会のメニューに加えたことがあった。

そのスープは〈コーンスープ〉を薄緑色にした感じで、徹底的に裏漉してあるので非常に滑らかなものだった。

チーフが自信タップリに言う。

「今日のスープは旨いでぇ❗️残ったらお前チョッと味みてみ」

・・・・・・・

やがて10名程のフレンチコースがスタートした。

オードブルに続いていよいよスープが提供される。

スープチューリンでお客様にスープを配り終えてバックヤードに戻ってきた僕は、チューリンに残っているスープを少し飲んでみる。

そして率直な感想を述べた。

「ん~~チーフが言う程、そんなに旨くないなぁ」

「なんやとぉ❗️」

〈えっ?❗️〉

居なかったと思ったチーフが真後ろにいたのである。

絶句した。

(スープチューリン:10人分くらいのスープを入れる壺のような形をした金属製の容器)

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