No.204【クルマの試乗】

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庶民にとって、クルマは家の次に高価な買い物なのかもしれない。だから、少々は高くついても、キチンとしたディーラーでクルマを買う人も多いのだろうと思う。

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結婚して数年が経った頃、子供が3人になった。乗っている4ドアの乗用車では狭くなってきたので、そろそろ3列シートのミニバンに買い換えようかと考えていた。

ある日、家族全員でディーラーの試乗会に出掛けていった。乗って行った乗用車はそのディーラーで購入した2台目のクルマで、そのディーラーとの付き合いはけっこう長い。

ディーラーには今を流行りのミニバンが2車種あった。

順番に試乗を終えて店内に戻り、商談に入った。いつもの担当営業マンが不在だったので、商談には別の営業マンが当たってくれた。メカニックも同席している。コーヒーを勧めながら営業マンがクルマの感想を訊いてくる。

「ご主人、試乗はいかがでしたでしょうか?」

「はい、そうですねぇ、家内も、特に子供達は〇〇〇のほうがいいって言うんですけど、3ナンバー車は維持費がねぇ~」

「お子様がそうおっしゃるんでしたら、今、お乗りのおクルマの下取りもシッカリさせて頂きますし、ご試乗中におクルマの点検をさせて頂いたんですが、車検も近いですし、ブレーキパッドも減っていまして、車検費用と部品交換費用も重なりますので、思い切って〇〇〇になさってはいかがでしょう?」

私は耳を疑った。

「えぇ?あのぉ~、ブレーキパッドはついこないだ、ここで交換したばかりなんですけど・・」

「❗️・・・・」

瞬間、営業マンとメカニックの顔が凍りついた。

点検もせずにブレーキパッドが減っているといい加減なことを言ったのか、或いは、先日の修理の時にブレーキパッドを交換してもいないのに、料金だけを取ったのかのどちらかなのだ。

そのディーラーとは、即、縁を切った。

・・・・・・・

過日、我が家には他社ディーラーのミニバンが納車された。

メーカーが悪い訳ではないのだが、あの件があって以来、そのディーラーが扱っていたメーカーのクルマは1台も購入していない。そのディーラーに限って、ディーラー・イコール〈信用〉とはならなかったのである。

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