No.499【ご所望のもの】

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随分むかしの話である。

ある大きな組織の代表者が、地方の下部組織を視察するために、そこへ出向くことになった。

前もって連絡を受けた地方組織では、その代表者に喜んで頂こうと、接待の仕方について、皆んなで喧々諤々の話し合いをした。

色々と話し合った結果、これなら良かろうというプランが出来上がったのだが、それでも不安を感じるので、本部組織にお伺いを立てて、代表者の所望を訊いてみたのだった。

返ってきた返事はこうだ。

「ホワイトホースを準備して頂ければ有り難いです」

「はっ❗️ホワイトホースでございますね!かしこまりましたっ❗️」

代表者のご所望を知った下部組織は、準備をするためにあちこちを駆けずり回った。

・・・・・・・

さて、視察当日がやってきた。視察は予定通りに進んでいった。

緊張した中、視察はなんとか無事に終了した。

下部組織の長が代表者に挨拶をする。

「本日は誠に有り難うございました。えぇ~~早速、歓迎と御礼の宴に入らせて頂きたいと存じますが・・ご所望のホワイトホースを準備させて頂いております・・えぇ~宴席に入ります前に、チョッとご覧になって頂けませんでしょうか・・・」

そう言うと、長は部下に目配せをした。

指示を受けた部下は一端部屋を出た。

暫くすると、数人の部下たちが「ドウドウ~」と言いながら、1頭の白い馬を連れて部屋に入って来たのだった。

長が得意げに挨拶をする。

「色々なところを奔走しまして、やっと見つけてまいりました!ホワイトホースでございます❗️」

それを見た代表者は驚いた。

「おう~ありがとうありがとう❗️・・でも、折角なんだがなぁ・・私が望んだのはスコッチのホワイトホースなんだよ。ウヰスキーの・・」

当時はまだウヰスキーが一般的ではなかったので〈ホワイトホース〉のなんたるかを誰も知らなかったのだ。

・・・・・・・

落語のネタ咄ではない。嘘のような、本当の話なのである。

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