No.504【サンルーフの車】

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今ではそれほどでもないが、一昔前にはサンルーフ仕様の車が流行っていた時期があった。そんな時の出来事である。

ある若いお母さんが、幼稚園児の息子を連れて、チョッとしたドライブに出掛けることにした。

サンルーフ付きのワンボックスの新車を買ったものだから嬉しくて仕方がなかったのだ。

サンルーフは結構高額なオプションだったが、奮発してオーダーしたものだった。
お母さんは、息子の友達とそのお母さんを誘ったのだが、そのお母さんに都合があって、友達だけが付いて来ることになったのだった。

お母さんの運転で、助手席に自分の息子が、2列目シートにお友達の男の子を乗せて颯爽と出発した。

子供たちは大喜びでハシャギ捲っている。

暖かい日だったので、車内に春風を入れようと彼女は自慢のサンルーフを開けることにした。

「今日は暖ったかいでしょ!天井のサンルーフを開けるわよぉ」

「わ~いっ❗️開けて開けて~っ❗️」

息子が歓声を挙げる。

《ウィ~~~ン》とサンルーフが開くと、子供達のテンションは絶好調になった。

「わ~っ❗️オバチャンお空が見えるよぉ」

「お母さん、前の天井も開けてよぉ」

その車は前列と2列目の天井に、それぞれ独立したサンルーフが付いていたが、2列目だけが開いたので、助手席に乗っていた息子が前席のサンルーフも開けるように催促をしたのだ。

「はいはい、チョッと待ってね、今ガード下を通るから・・・結構低いわねぇ、天井大丈夫かしら?ぶつからないわよねぇ・・」

そう言いながら車がガード下に入った時だった。

「グシャンッ❗️」

と音がすると同時に2列目シートに「ドシャッ!」と何かが落ちる音がした。
彼女は急ブレーキを踏んで車を停止させ、後ろを振り向いた。

「❗️ギャーーーーーッ❗️」

そこには首から血が吹き出ている、頭が無い男の子の身体が横たわっていたのである。

・・・・・・・

サンルーフから顔を突き出したまま車がガード下に進入したので、ギロチンのように男の子の頭が千切れて吹っ飛んだのだった・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

この恐ろしい事故は、我が子ではなく、他人の子だったということが、容赦無用のより凄まじいプレッシャーとなって彼女に襲い掛かったのである。

・・・・・・・

悲惨極まりないこの話は、実に陰鬱な雰囲気で数ヶ月間は語り継がれたが、それ以降の彼女の消息を知っている者は誰もいない。

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