No.522【お裾分け】

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〈公営住宅〉に住んでいた時期がある。

ある日の夕方、玄関のチャイムが鳴った。

「ピンポ~ン!」

すぐに家内が応対に出る。

「は~~い!」

ドアを開けると、ギラギラと輝く1匹の〈太刀魚〉を片手にぶら提げた女性が立っている。同じ棟に住んでいる奥さんだった。

奥さんが言う。

「あの~、主人が釣ってきたんですけど、〈太刀魚〉・・食べますぅ~?」

「まぁ~立派な〈太刀魚〉ですねぇ❗️食べますよ~ありがとうございます~」

すると言葉が返ってきた。

「300円です」

「・・・は?・・・・・」

「300円です」

「・・あっ!はいはい!チョッと待って下さいね。今、お金を取ってきますから・・ね」

食べると言った以上、今さら断る訳にもいかない。

なんとも言えない空気の中で、家内は仕方なく300円を手渡して〈太刀魚〉を受け取ったのだった。

・・・・・・・

その奥さんは、少し変わったところがある人だという噂は流れていたのだが・・・チョッと変わり過ぎていた。

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