No.568【歯磨き粉】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.12.06 当時はどの家でもそうであったように、ウチの〈歯磨き〉も〈粉〉だった。やがて現在のようなクリーム状の〈チューブ入り歯磨き〉が発売されるのだが、当時のチューブの材質は〈錫・アルミ〉などで、現在のような、樹脂・紙・アルミ箔を重ね合わせた〈ラミネートチューブ〉ではない。上手に絞っていかないと金属製のチューブが皺々になってしまって最後まで綺麗に絞り出せなくなったりした。そして社会に少し余裕が出てくるようになると、ディズニーキャラクターなどを用いた子供用の〈イチゴ味〉や〈バナナ味〉といった、所謂「ハイカラ」な歯磨きが販売されるようになる。友達がそれらを自慢するので、僕も美味しそうなイチゴ味の歯磨きで歯を磨いてみたいなぁと憧れていたのだが、「お子様」を特別扱いするような風潮はまだあまり無かったし、チョッとだけ値も張っていたので親が買ってくれることはなかった。お金持ちん家の子供専用といった感じだ。そして丁度その頃、歯に付いたヤニをよく落とすという触れ込みで、愛煙家用の歯磨き粉〈タバコライオン〉が発売されたのだが、〈しんせい〉をスパスパ喫っていた親父のリクエストにより、ウチの歯磨き粉が、こともあろうに〈タバコライオン〉になってしまったのだった。だから、甘~い〈イチゴ味の歯磨き〉どころか、タバコを喫いもしない子供たちまでもが、辛~い〈タバコライオン〉を強いられる羽目になってしまったのである。毎日毎日、僕たち子供はヤニの付いていない白い歯を、ヤニ落としの〈タバコライオン〉でせっせと磨くのだ。・・・・・・・初めて憧れの歯磨きを使うことが出来たのは、小学校6年の時の修学旅行で友達のを1回分お裾分けしてもらった時である。ただそれは〈イチゴ味〉ではなくて〈バナナ味の歯磨き〉だった。
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