No.611【鯰な娘】

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僕がホテルに勤務していた時である。

スポットの女子大生で、〈ナマズ〉に似た顔をした女の子がいた。ホテルではアルバイトのことをスポットと呼んでいたのだ。彼女は仕事も出来て明るい性格なので、顔は〈ナマズ〉に似ていても、皆んなから愛されていた。

そんな彼女に〈渾名〉が付いた。
             

〈 ナマ~ン 〉

すると彼女が言った。

「ナマ~ン 言うなぁ~」

しかし抵抗も虚しく、結局は大学を卒業してホテルのバイトを辞めるその日まで、彼女は〈ナマ~ン〉と呼ばれ続けたのだった。

最後のアルバイトの日、唇の左右にナマズの髭を描かれた〈ナマ~ン〉はリネンカートに乗せられて、ゴロゴロと宴会場内を練り歩いたのである。

スポット達は口々に送別の言葉を贈った。

「ナマ~ン❗️ありがとう❗️」
「ナマ~ン❗️元気でなぁ❗️」
「ナマ~ンがいなくなると寂しいわぁ❗️」

皆んなから暖かい言葉を貰った彼女は言った。

「ナマ~ン 言うなぁ~っ❗️」

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