No.49【兄嫁➁】(ブーケ)

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兄の結婚式当日は朝から賑々しかった。来賓をはじめ友人達や親族も、食前酒などを飲みながら和やかに歓談している。
親族紹介のあとに続いて厳かな結婚式が執り行われ、やがて披露宴が始まった。
白無垢からウェディングドレスにお色直した花嫁は、友達の手作りのブーケを手に新郎と並んで入場してきたのだが、そのブーケを見た親戚の叔母さんがこう言った。
「なんや葬式花みたいなブーケやなぁ」
縁起でもないことを言う叔母さんだなぁと思ったのだが、そんな言葉は吹き飛ばすかのように、披露宴は大変に盛り上がって感動のうちにお開きとなった。こうして二人の新生活がスタートした。
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楽しい新婚生活が一年も経った頃だろうか、幸せな家庭に暗雲が垂れ込み始めた。兄嫁が突然倒れて緊急入院したのだ。
精密検査の結果、右脳に腫瘍が出来ているとのことで、左半身が完全に麻痺してしまっていた。若い人の癌の進行は速く、肉体を容赦なく蝕んでいく。
容態は日に々に悪化の一途を辿った。痛み止めのモルヒネはもはや効果がなくなって、ベッドに縛り付けられた兄嫁はもがき苦しんでいた。獣のような声が響く病室に入るには、親でも躊躇したほどであった。
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そうして3ヶ月後、苦しみ続けた兄嫁は僅か23歳という若さで、お腹の赤ちゃんと一緒にあっけなく逝ってしまった。(つづく)

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