No.74【美女のオモテナシ】

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台湾の観光バスの窓ガラスはサングラスになっていて、南国の強い陽射しを遮ってくれていた。外から冷房が効いた車内に返ってくる度に生き返ったような気持ちになったものだ。
中正紀念堂・龍山寺・圓山大飯店・故宮博物院などの名所旧跡を巡っているのだが、バスに戻る度に台湾美女のバスガイドが冷たいお絞りを手渡してくれた。
台湾の観光バスには2人のバスガイドが乗っていた。1人はその美女で、いわゆるバスガイドの制服を着ていて、短かめのタイトスカートからスラリと伸びる脚は男どもの視線を集めた。
さて、もう1人のガイドと言えば、なんと中年の男性であった。実はこの中年男性が日本の女性バスガイドがやるような仕事を受け持っているのであるが、台湾ではごく普通のことらしい。彼は学校の校長も務めたインテリで、流暢な日本語で事細かに名所旧跡の解説をしてくれた。
一方、美女ガイドの方はなにをするのかといえば、乗車時にお絞りを渡してくれたり、車内での土産物の販売をしたりするわけである。彼女たちはバス会社の人間ではなくて、その売上から給料が支払らわれるんだということだった。
それから、ちょっとしたホステスみたいなこともやってくれた。
当時はバスの中でも自由にタバコを吸うことができたので、私はタバコを吸おうとセブンスターを1本咥えて、さて、火を点けようかとライターを探したのだが見つからない。そこを通り掛かったナイスボディで超美人のバスガイドさん・・・こともあろうに、隣で友人が同じようにタバコを咥えて火を点けようとしているその友人の手から100円ライターをもぎ取って、私のタバコに火を点けてくれたのだった。
「謝々!」
覚えたての中国語で礼を言うと
「〇★■◎Х◆△・・」
と、なにやら言ってニッコリと笑ってくれた。
私は優越感と嬉しさでいっぱいになったのは当然なのだが、ライターをもぎ取られた挙げ句に火も点けて貰えなかった友人がムクれるやら落ち込むやらで、その夜、フーバーナイトクラブでチャイナドレス姿の美人歌手を見るまでは機嫌が直らなかったのだった。

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