No.78【MR2の女】

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まだ日本の景気が良かった頃だ。バブルに浮かれてひとりの女の子がMR2を買った。
ところがある日のことMR2が動かなくなってしまったのだった。いくらセルを廻してもエンジンが掛からない。やがてバッテリーも上がってしまった。PHSが繋がったので彼女はJAFを呼ぶことにした。
「もしもし!エンジンが掛からないんです!すぐに来て下さい!え~と場所はですね・・・」
《はい!分かりました!今から1時間くらい掛かりますがよろしいですか?》
「はい!待ってます。よろしくお願いします!」
・・・・・・・
ようやくやって来たJAFのサービス員に彼女は言った。
「あっ!JAFさん!大変なんです!エンジンが無いんですっ!どうりで掛からないはずです。エンジンどっかで落としたんでしょうか?」
ボンネットを開けて狼狽えている彼女にサービス員が言った。
「あの~これMR2じゃないですか。前のボンネット開けてもエンジンはありませんよ」
そう言いながら彼は後ろを開けた。
「わっ!あった!」
「MR2は後ろ側にエンジンが積んであるんです・・まぁ正確に言えば、ほぼ中央というか・・ミドシップですから」
「えぇ~っ!そうだったんですか・・・すいません・・でもエンジンが・・」
彼女が恐縮してそう言うとサービス員が呆れたように言い放った。
「ガス欠です!」
「ガスケツって・・すぐに直るんですか!」
サービス員は呆れるのを通り越してこう言った。
「・・あのねぇ、ガソリンタンクが空っぽになったということです」
もっと言ってやりたいことがあっただろうに、サービス員はグッ!と堪えたに違いない。

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