No.79【重いハンドル】

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その女性はピアノやエレクトーンの講師をしていて、楽器店の教室や個人レッスンの生徒宅に行くのにマイカーを使っていた。
レッスンが終わったある日、他に予定もないので、そのまま自宅に帰ることにした彼女はクルマに乗り込んで発進させた。
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ところが暫く走っていると、クルマが徐々に左側に寄ろうとすることに気が付いた。
それがドンドン強くなってきて、ハンドルをシッカリと握っていないと左側に突っ込みそうになるのだった。
あと数キロの道のりを彼女は耐えた。左に寄ろう寄ろうとするクルマを必死になって真ん中に戻し続けながら走った。
なんとか自宅に着くことができたのだが、腕は痺れるし、もうクタクタになってしまった。
《あぁ~無事ウチに着いてよかったわ・・でもなんだかハンドルの調子が悪かったわねぇ・・このクルマ》
そう思って何気なくクルマの周りを見て驚いた。
「えぇ~っ!なにコレ~ッ!」
なんと、左の前のタイヤがパンクして、ゴムがボロ雑巾のようになっているではないか!
彼女は数キロの道のりを、殆んどホイールだけで走って帰ってきていたのだ。

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