No.96【蕎麦の洗礼】

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東京で生活し始めた若い頃、1人で蕎麦屋に入って「ざる蕎麦」を注文したことがある。
やがて運ばれてきた「ざる蕎麦」には如雨露のような物が添えられてあった。
《なに?これ・・・》
と思って蓋を開けてみたら、白く濁ったスープのようなものが入っている。
「すいませ~ん!これ、なんですか?」
店のおねえさんを呼んで訊いてみた。
「はぁ?蕎麦湯ですけど!」
「ソ・バ・ユ?・・これ、どうするんですか?」
「後で蕎麦つゆをそれで割って飲むんですけど!」
おねえさんは、そんなことも知らないのか?と言わんばかりに僕を白い目で見ながらそう言った。
《うわ~っ!上から目線!感じ悪るっ!》
それでも僕は蕎麦だけはシッカリと食べた。しかし蕎麦湯の初体験だけは意地でもここではしないことにしてサッサと店を出たのであった。
東京の蕎麦文化は奥が深かった。

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