No.121【Uコン機】

Uncategorized




中学の時《Uコン機》を作った。ラジコン機を飛ばしたかったのだが、高価なので中学生には手が届かない。
《Uコン機》というのは、機体を細い2本のワイヤーで繋いで、円を描くように飛行させるというものだ。
紐の先に重りを付けてブルンブルン振り回すような感じである。
Uコンはワイヤーの長さが数メートルあって、エンジンを着けた機体が操縦士を中心にしてグルグル回るのだ。
2本のワイヤーの片側に機体、片側にグリップ(取手)がある。
飛行中は遠心力でワイヤーはピンと張っている。ワイヤーと昇降舵とが繋がっているので、持っているグリップを手首で微妙に動かすことによって飛行機の昇降舵が動き、機体が上昇したり下降したりした。
友達と相談してそれぞれが機体を買うことにした。
少ない小遣いを貯めて、やっとの思いで念願の機体キットを買い、お互いの家に行ったり来たりして相談しながら作り続けた。僕の機体は2ヶ月後に完成し、友達の機体はそれより少し遅れて完成した。
機体はドイツの戦闘機《フォッケウルフ》で、友達のはノースアメリカンの《ムスタングP―51》だ。
フォッケウルフには〈MAX―OS10〉というエンジンを載せたのだが、指定の09エンジンよりもホンのチョッとだけ排気量が大きいエンジンだ。
友達のムスタングには〈FUJI―099〉というエンジンが載せられた。
・・・・・・・
待ちに待った初飛行の日、僕たち2人は中学校のグラウンドにやってきた。
まずは友達のムスタングから飛ばそうということになったのだが、案の定エンジンがなかなか掛からない。模型のエンジンを掛けるのは非常に難しいのだ。
「ビ~~~~ン」
やっとエンジンが掛かり、コントロールグリップを握った友達はグラウンドの中央に立っている。
僕はエンジンが唸るムスタングを抱えてワイヤーがピンと張るところまで行って合図を送る。
「ええかぁ~~離すぞ~っ❗️」
「おぉ~っ!・・行け~っ❗️」
僕はそっと手を離した・・のだが
ムスタングが前に進まない。エンジンを調整して最高回転にもっていっても滑走するだけが精一杯で離陸までいかないのだ。
エンジンのパワー不足だった。
〈FUJI―099〉は、ホン入門用のエンジンだったので、それほどパワーは無いのだった。
何度かトライしのだが、《ムスタング》の飛行は遂に諦めた。
僕の《フォッケウルフ》が飛ぶ番が来た。エンジンを掛けた。さっきよりも割りと早くエンジンが掛かった。
「ビビ~~~~~~~~ン」
〈MAX―OS10〉は一際甲高い音を立てて唸っている。明らかに〈FUJI―099〉の音とは違って力強かった。
僕はコントロールグリップを握り締めて固唾を飲んだ。
「お~い!手ぇ離すぞ~っ❗️」
友達が叫ぶや《フォッケウルフ》はサ~ッ!と前進した途端にフワッ!っと浮き上がった。
瞬間、機体が機首を下げたので、慌ててグリップを引いて昇降舵を上げたら直角に急上昇を始めた。
「ビ~~~ン」
《あっ!やばい》
すぐに昇降舵を下げたら今度は垂直に急降下し始めた。もうコントロールが出来ない。友達が叫んでいる。
「わ~~~っ❗️」
「ドシャッ❗️」
地面に激突して主翼が折れて吹っ飛んだ。
「・・・・・・・・」
「・・・・」
わずか1周半の飛行だった。
後で知ったことだが、Uコンのグリップは、超デリケートに動かさなければならないのだった。
こうして機体はオシャカになってしまったのだが、自慢の〈MAX―OS10エンジン〉だけは、宝物として、永らくのあいだ僕の机の上に飾られていた。


コメント

タイトルとURLをコピーしました