若かりし頃、私はあるピアノメーカーの調律師を養成する学校に生徒として在籍していた。
ある日の講義でのこと、先生は、誰もいない音楽室から夜な夜なピアノの音がするので調べて欲しい旨の依頼があったという話をし始めたのだ。
早速、問題の音楽室に出向いてピアノの天板を開けたり鍵盤を外したりして調べた結果、ピアノの内部にはピアノの部品として沢山使われているフェルトやクロスを綿のように噛み砕いて作ったネズミの巣があるではないか。夜になるとネズミがビアノの中を動きまわり、弦を打つハンマーに当たって音がしていたのである。
幽霊がピアノを弾くという噂や話はそういうことなのだ・・・が、ネズミの巣などは一切ないのにもかかわらず、夜になると、本当に音がするピアノに遭遇したことが一度だけ、あったそうである。
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