
ファミレスで仕事をしていた時のことである。
レジに立っていた僕の所へ女性のお客さんが駆け寄ってきた。
「すいません!クルマを出そうとしたら、他の人のクルマが邪魔してて出られないんですけど・・・」
「あぁそうですか。移動して頂きますので少々お待ち下さい」
そう言って外の駐車場に出て、問題のクルマのナンバーを確認した。無造作に駐車されたそのクルマは高級乗用車だった。
店内に返ってすぐにマイクで呼び出しを掛ける。
「お客様にお知らせ致します。〇〇33の〇〇〇〇のおクルマでお越しのお客様、恐れ入りますが、おクルマの移動をお願い申し上げます」
すると、レジ近くの席から、横柄そうな中年男性が大きな声を出して僕を呼びつけ、クルマのキーを突き出してこう言った。
「おいっ❗️俺のクルマだっ❗️お前が動かしとけっ❗️」
「あっ!あの~高級車ですけど、私が動かしてもよろしいんですか?」
僕は確認した。
「つべこべ言わずに動かしとけっ❗️俺ャァ飯食ってんだ❗️」
「はい、かしこまりました」
そう言ってキーを受け取った。
ドアの鍵はキーのリモコンボタンで開いた。そして恐る恐る運転席に乗り込んで、ボタンを押してなんとかエンジンを掛ける。流石に静かなエンジン音だ、というよりも殆んど音がしていないではないか。
《さて、パーキングブレーキを解除して・・・と・・ん~?レバーが無いなぁ・・・フット?・・外れないなぁ・・・・》
ブレーキの外し方がどうしても分からないのだ。そのクルマは電動パーキングブレーキ仕様だったのだが、知る由もなかった。
待っているお客さんもいる。
《えぇ~い、もういいや!》
僕はもうそのまま動かすことにした。
「バキッバキバキッ❗️」っと音を立てながらも、その高級車は動いた。
《流石に排気量が大きいエンジンだけはあるなぁ、すげートルク❗️》
妙な感動を覚えながら、何とか邪魔にならない所への移動が終わったのだった。
・・・・・・・
「移動、終わりました。キーをお返し致します。有り難うございました」
そう言って中年男性にキーを返した。
《あぁ~なんの問題もなく移動出来てよかった~》
なんの問題もない訳がない。
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