No.200【コンソメスープ】

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〈コンソメスープ〉というスープがある。琥珀色をした透明な、あのスープだ。

固形スープの素も売られているし、ファミリーレストランに行ってもお目に掛かることが出来る。一見、簡単そうなスープなのだが、本物の〈コンソメスープ〉とは、実に手の込んだものなのだ。

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僕はシティホテルの宴会部署でウェイターをしていた時期があるのだが、そのホテルの宴会洋食が出す〈コンソメスープ〉は絶品だった。

調理場も自信があったのか、スープのみで勝負していて、入れる具材は、クルトンもしくはタピオカくらいだった。

我々サービス員は、スープチューリンという、スープを入れた容器を手に持って、お客様にサービスをする訳なのだが、スープが少し余ったりすることがある。他のスープの時にはお構い無しだが〈コンソメスープ〉に限って、残ったスープは全部、調理場に返せというくらいだったのだから、それがどれだけのものかが分かろうというものだ。

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〔ウィキペディアを引用〕
『《コンソメ》とは、フランス語で(完成された)という意味。牛肉・鶏肉・魚からとった出汁(ブイヨン)に、脂肪の少ない肉や野菜を加えて煮立てる・・・澄んだ琥珀色で濁ったものは許されない。煮込む時アクが出て濁るのでアクをマメに掬い、卵白や卵の殻を加えてアクを吸収させる。
さらに、それを濾した後で、浮いた脂分を取り除く・・』

という、恐ろしく手の掛かるスープなのだ。

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そのホテルの〈コンソメスープ〉の味は本当に素晴らしかった。あれが本物の味だと僕は勝手に思っている。それは、普段お目に掛かるものとは全くの別物なのだ。だからいつかは家内にも一度は味わわせてやりたいと思いつつ、未だに実現はしていない。

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先日、甥坊の結婚式で大阪に行った。会場はホテルではなかったのだが、いま大人気の披露宴施設である。そして料理がフレンチのコースだった。メニューを見るとスープがコンソメと書いてあったので大いに期待をしたものだ・・・・さて、出てきたスープの味はというと・・誠に残念なものだった。

無論、僕はフレンチの料理人ではないし、日本中、世界中の〈コンソメスープ〉を飲み歩いた訳でもないのだが、あれから数十年経った今でも、あのホテルで出していたスープの味が、僕の〈コンソメスープ〉の基準になっているのである。

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