
若い頃、親戚の叔父さんが、どういう風の吹き回しなのか、高級レストランに連れて行ってくれたことがあった。
入ったレストランは、田舎者の叔父さんにはいささか不釣り合いな店だった。僕もそんな所は初めてだったので緊張した。
店内にはいかにも高級感溢れるムードが漂っているのだが、そんなことにはお構いなしに、叔父さんは大声でウェイトレスに注文をする。
「ねえちゃんよぉ!この店で1番高い肉をちょうだいやぁ~・・・どれかいなぁ・・英語は分からんっ❗️」
フランス語かもしれない横文字のメニューに目を泳がせながらそう言った。
「あ、はい・・それでしたら、こちらの〇〇〇〇になります」
ウェイトレスはメニューの1行を指差した。
「こりゃぁ肉か?」
「はい左様でございます」
「よしっ❗️じゃぁそれを2つじゃ!お前もそれでええのぉ!」
叔父さんは僕に確認を取るとさらに付け加えた。
「ねえちゃん❗️肉の横へ菜っ葉が付いとるかぁ?菜っ葉ぁいっぱい付けてくれぇよ菜っ葉~!身体にええけぇのぉ❗️」
余りの勢いにウェイトレスはプッ!っと吹き出した。
叔父さんの迫力勝ちである。緊張感が一気に吹き飛んでしまった。
・・・・・・・
ただ、やがて運ばれてきた〈フィレステーキ〉の肉の横には、マッシュポテトと人参のグラッセと1本のクレソンが乗せられているだけで、残念ながら菜っ葉の大盛にはなってはいなかった。
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