No.335【邂逅の夏➁】

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仕方なく遠い田舎に帰って来た僕は、とうとう〈お見合い〉をする羽目になってしまった。

大体が、皆んな自由に恋愛をして結婚していく時代なのに、親同士のお膳立てで見知らぬ男と女が「はい、こんにちは!」なんて、おかしくってやってられないのだ。

・・・・・・・

けれどもすぐに当日がやってきた・・・

〈お見合い〉は実家から数十キロ離れた、先方のお嬢さんの親戚の家で行われた。

・・・・・・・

〈お見合い〉の会場になる家の2階では、どんな男なのかを見極めようと、興味津々の妹がくっ付いて来ていて、窓から半分顔を覗かせて僕たちの到着を今か今かと待ち構えていた。

やがて階下に我々の姿を確認するや、妹はハシャギまくりながら姉に伝えた。

「お姉ちゃん❗️ヤングよっ❗️ヤングッ❗️若いよっ❗️30歳には見えないよ~っ❗️」

・・・・・・・

やがて息が詰まるような雰囲気の中で〈お見合い〉が始まった。

先方は母親が、こちらは父親が付き添っていた。

型通りの挨拶を済ませると、双方の親がそれぞれのプロフィールを紹介する。

僕はスーツ姿で臨んだが、相手のお嬢さんは淡い緑色の振り袖で髪をアップにしている。ソバージュヘアの写真とは全く違った印象を受けたのだが、お母さんと本人は額が畳にくっ付く程に頭を下げっ放しだったので、肝心な顔がよく見えないのであった。(つづく)

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