No.372【ルージュのカップ】

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これは、本当はしてはいけない話なのだが・・・・・

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ホテルの宴会場では、それはもう色々な催し物が開催される。

ある時、宝石の卸しを取り扱う会社の〈展示即売会〉が催されていた。それは、ホテルの1番大きな宴会場を貸し切って3日間ほど続いた。

さて、大掛かりな〈展示会〉には大抵の場合、ゲストとして〈有名芸能人〉が呼ばれることが多い。それは顧客へのサービスでもあり集客の手段でもある訳だ。

宝石購入の契約者が〈有名芸能人〉とツーショットの写真が撮れるという案配なのだ。

お客様は小売業者が多いので、ツーショットの写真を店舗に飾っておくことは商売にも繋がるというものなのである。

さて、今回の展示会のゲストは、ある〈有名な美人女優さん〉だった。

休憩時間を挟みながら、1日3回ほど顔を出して会場を歩いたり、お客様と記念写真を撮ったりするのが彼女の仕事なのだった。

記念写真を撮る合間に〈コーヒーブレイクタイム〉が設けてあって、彼女は真っ白いコーヒーカップに淹れられたコーヒーを飲んでいる。

さぁ、次のお客様との撮影が始まる。ホテルのサービス員は彼女が飲んだコーヒーカップをテーブルからバックヤードまで下げるのであるが、その真っ白いカップの縁には〈美人女優の真っ赤なルージュの痕〉が付着しているのだ。

それを見た1人のサービス員がルージュの痕を見詰めながら言う。

「俺・・〇〇〇〇の大ファンなんです❗️ ・・・ホテルを首んなってもいいっ❗️ このカップ、持って帰らせて下さいっ❗️」

すると、周りにいた社員達が挙って非難する。

「おいっ❗️ おめ~オタクみたいなこと言ってんじゃねえぞっ❗️ バカヤロウッ❗️」

「ホテルマンにそんなことが許されるとでも思ってんのかっ❗️」

「そうだよっ! ・・馬鹿なこと言ってんじゃねえよ・・・オレの方が持って帰りたいわ・・・」

「おいっ❗️誰かこのカップを早く洗い場へ持ってけよ❗️お前付いていってカップの縁、舐めんじゃねえぞっ❗️」

こうして、哀れ熱烈ファンの熱き思いも虚しく、〈ルージュのカップ〉は洗い場へと運ばれていったのであった。

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