No.379【オタマジャクシ】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.10.12 少年時代には、よく〈川遊び〉をした。友達数人と河原に行っては、浅瀬の入り込んだところで小魚を捕ったりして遊んだ。当時の川の入り江には〈鮒〉〈メダカ〉〈ミズスマシ〉〈ドジョウ〉〈縞ドジョウ〉〈タガメ〉〈タイコウチ〉〈川ニナ〉〈タニシ〉〈ゲンゴロウ〉、小さなハゼのような〈ゴリ〉や、熱帯魚のような〈オヤニラミ〉などなど、なんでもいた。〈殿様ガエル〉の産卵のシーズンには、孵化した沢山の〈オタマジャクシ〉で、川の底は大量の黒豆を撒いたような様相になった。そこで、魚捕りに飽きた僕たち少年は、その〈オタマジャクシ〉に目を付けたのである。一旦、家に帰って、またすぐに河原に戻ってきた少年たちの手には〈竹ひご〉と〈タコ糸〉と〈縫物針〉が握られている。そして、何本かを束ねた〈竹ひご〉を弓なりに曲げて、端と端とを〈タコ糸〉で結んで〈弓〉が完成する。束ねた〈竹ひご〉がバラバラにならいように3・4ヶ所を〈タコ糸〉で縛っておく。続いて1本の〈竹ひご〉の先端に縫物針を輪ゴムで縛りつけると〈矢〉が出来上がる。全員の〈弓矢〉が出来上がると、皆んなで膝下くらいの深さの浅瀬に入っていって、川底にウヨウヨと散らばっている〈オタマジャクシ〉を目掛けて〈竹ひごの弓矢〉の〈矢〉を射っていくのだ。何十匹もの〈オタマジャクシ〉へのジェノサイドが始まったのだ。そうして〈オタマジャクシ〉は次々に殺されていって、やがて川の中は〈オタマジャクシ〉の死骸だらけになり、僕たちの〈オタマジャクシ遊び〉が終了するのである。少年は時として〈悪魔〉になった。
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