
これは、ある男の述懐である。
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『私の妹は6才で、もう40年前になりますが、白血病で亡くなりました。
6才でも死ぬということを考えるんですねぇ・・・
ある日、入院先の国立病院から、一週間の予定で一時退院をして家に帰ってきました。
家族は公園に連れて行きたいな、海にでも連れて行きたいなと、色んなことを思っていましたが、妹はどこにも行きたがらないんです。
それどころか客間にありました、狭~い小さな袋戸棚の中に、人形さんを持って毎日そこに入るんです。
そんな狭い暗いところで何してるんだろうと思って、妹がその部屋から出て行ったところを確認して、その袋戸棚を覗いたらビックリしました。
●●子という名前の妹でしたが、誰にも見えないその袋戸棚の壁に何か書いてあるんです・・・・・そこにはこう書いてあったんです。
〈●●子はしぬのかなぁ〉
〈しんだらどうなるのかなぁ〉
と、死ぬという言葉がいっぱい書き綴ってあったんです。
6才の子供が、死ぬということをどんな思いで書いたんだろうか・・想像すると胸が詰ります。
言葉にするのが怖かったのかなぁ?母親に訊いたら母親が悲しむのかなぁ?・・色んなことを考えた挙げ句の姿だと思うんです。
ところが6才の子供がいつまでもその不安を胸に仕舞っておけるはずがないですねぇ。
ある時、鼻血が止まりませんという連絡を受けて、家族全員が病院に駆け付けました。
ベッドの上の妹は、苦しい息の中で、この不安を母親にぶつけたんです。
「・・おかあさん・・わたししんだらどうなるの?・・」
と訊いたんですよ。
私も今、4人の子供の父親になりましてネ・・明日をも知れん我が子が「わたし死んだらどうなるの?」と問われた時の親の思いを想像してみて下さい。本当に辛かったと思うんです。
ところが母は強いですねぇ!
私の母は「わたし死んだらどうなるの?」と問われた瞬間、パッ!と満面の笑みになりましてネ・・
そして病室中に響き渡る大きな声でこう言ったんです。
「●●ちゃんが死んだらネェ❗️お母さんのお腹からまた赤ちゃんになって生まれてくるんだよっ❗️」
とこう言ったんです。
大好きな信じている母親から「お母ちゃんのお腹に帰ってくるんだ」と聞かされた妹は心から安心をしました。その瞬間にフワ~ッと不安の色が顔から消えましてネ・・・
それから亡くなるまで、お見舞いに来る人来る人に、誰も訊いてもいないのに妹が言うんです。
「ねぇねぇ、わたししんだらどうなるのかおしえてあげようか・・おかあちゃんのおなかからまたかえってくるんだよっ❗️」
そう信じ切って、安心をして、妹は亡くなっていきました。
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親の懐を知っているということは、ここまでの安心を味わえるんだということを、妹のその姿から私は学ばせて貰ったんです』
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(ある講演からの引用)
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