No.557【便意】

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4年前に大腸癌の手術をしてから以降、そんなにしょっちゅうではないのだが、唐突に〈便意〉が襲ってくるようになった。

その手術は腹腔鏡術式で行われ、下行結腸を10cmほど切除して、また繋ぐという手術だった。癌の転移を防ぐために周りのリンパ腺も除去された。

腹腔鏡術式は大きく開腹することなく、腹部の何ヶ所かに小さな穴を開けて、そこから器具を入れて手術を施すという、身体に掛かる負担を少なくする手術方式である。

ところが手術の1週間後に繋ぎ目から便が漏れて腹膜炎を起こしてしまったので、結局は開腹手術をしなければならなくなった。

相当にヤバイ状態だったらしいが、死ぬこともなく、今日も元気に過ごしている。
2度の手術のお陰で、腹部はズタズタにされてしまって、中央を縦に大きく切った傷や、人口肛門の痕、ドレンホースの穴の痕など、合計十数ヶ所の傷痕が今も残っている。

傷痕は残ってしまったが、あれから4年間、全く癌の転移が認められないのが幸いだ。

ただ少しだけ厄介なのが、タマにやってくる頻繁な〈便意〉なのである。

過去のnoteにも近畿自動車道で便意が襲ってきて死にそうになった話を書いたことがあるのだが、今回は一般道でそれが起こってしまった。

・・・・・・・

その日、T市で用事を済ませた僕はクルマに乗り込み、80kmほど離れた自宅を目指していた。クルマで移動する時はいつも大腸の状態を心配しなければならない。当然、シッカリとトイレを済ませてから出発することを心掛けている。

ところが〈便意〉は突然やってくるのだ。出発前に普通の便が出たからといって侮ってはならない。突然〈大腸癌手術あがりの大腸〉の裏切りが始まるのである。

さぁ腹痛が始まったかと思うや忽ち強烈な便意が襲ってくる。この場合は、普通の便が結界というか栓をしていてというか、それが無くなって、軟便や下痢が一挙に出口に雪崩れ込んでくるといった感じなのだ。

しかし走っている道路の周りは行けども行けども山と田圃しかない。コンビニなんて10kmに一軒あればいいほうなのだ。

いよいよ切羽詰まってきた。もう泣きそうだ・・・

いよいよ諦めかけた時に道路工事現場のプレハブの事務所が見えてきた。側には縦長の簡易トイレが突っ立っているではないか❗️

即、事務所の前の空き地にクルマを突っ込んだ。

急いで事務所のドアを開けて声を掛けようとしたのだが鍵が掛かっていて開かない。

〈えっ❗️留守かっ❓️今日は休みか❓️❗️これじゃトイレにも鍵が掛かってるんじゃないだろうな❗️〉

最悪〈野〇ソ〉を覚悟しながらトイレのノブに手を掛ける。

「カチャッ❗️」

〈開いたっ❗️〉

ドアには鍵が掛かっていなかったのだ。神に感謝ながら飛び込んだ。

・・・・・・・

一息ついた僕はやっと平常心に戻ることが出来た。有り難いことにトイレットペーパーも備えてあったし本当に救かった。

トイレを終えて余裕が出た僕は、それでも連続してやってくる〈第2波の便意〉に怯えながらクルマを発進させたのである。

冷や冷やしながらハンドルを握っていると、ふと子供の頃に皆んなで口ずさんでいた〈ザレ唄〉を思い出した。

〈🎵ミッちゃん道端ウ〇コして~~🎶紙がないから手で拭いて~~🎵もったいないから舐めちゃった~🎶〉

そう言えば医師から指示されている〈大建中湯〉とかいう漢方の胃腸薬・・ここ暫く服用するのをサボっているのだが、やっぱり飲んだほうがいいのだろうか・・・

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