No.37【スカウト➁】

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東京で暮らし始めてから、私はすぐにファミリーレストランでアルバイトを始めた。店長が深夜勤務の時間帯なら採用できるというので、若かった私は体力には自信があったし、時給の高さにも惹かれて深夜勤務のその店を選んだ。
数ヶ月が経って仕事にもなんとか慣れてきた頃である。その店が池袋に近いということもあってか、明け方、モーニングメニューに切り替わる頃になると、池袋のゲイバーの「おねえさん達」が仕事帰りに来店するようになった。
そして、私はその中のひとりの「おねえさん」にいたく気に入られてしまって「〇〇く~ん❗️」と名前で呼ばれるようになっていた。ファンデーションの上から口髭が透けて見えるような「おねえさん」である。
その日も相変わらず「おねえさん達」のテーブルはキャーキャーと盛り上がっていたのだが、やがて件の「おねえさん」が手を振りながら私を呼んでいるのが目に入った。
「〇〇く~ん❗️ちょっとこっち来て~っ!」
・・・・・・・・・
「はい!お待たせ致しました」
「〇〇くん、いつも可愛いわねぇ、相変わらずいい声してるわねぇ。」
「いえ、とんでもございません」
「今日はマネージャーが話したいことがあるんだって!」
「おねえさん達」の中に混じって座っている、ちょっと凄みのあるひとりの中年男性が私に話し掛けてきた。
「君はここでいくら貰ってんの?ウチに来たらもっとたくさん稼げるんだけど、どう?ウチに来ないかい?」
無論、丁重にお断りした。

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