No.560【写真撮影】

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50人くらいが集まったある催しで、写真係になっていた僕は張り切って1眼レフカメラを持参していた。

スナップ写真を適当に撮った後、集合写真も無事に撮り終えてホッとしていたところへ、75歳になった知り合いのご婦人がやってきて、写真を撮って欲しいと頼まれた。75歳とは言うものの若ぶりで中々綺麗な女性である。

「あっ!〇〇君!悪いけどアタシの写真を撮ってくれなぁい?」

僕は快く受けた。

「はい!いいですよ❗️」

すると彼女が言う。

「アタシもさぁ、とうとう後期高齢者になっちゃったからねぇ。遺影を撮っとかないとね!遺影を」


「遺影❗️」

「最近写した写真が無いのよね」

どうやら彼女は本気で遺影を撮ってもらおうと思っているようだ。

死期を悟っているとは考え難いほど元気イッパイである。当分の間は死にそうにない。

〈そんだけ元気だったら死ぬのはまだまだ先のことでしょ、いま撮っても無駄ですよ。早過ぎて〉

とは言えずに黙ってシャッターを切った。

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