No.562【電車のヤンキー】

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僕が電車通勤をしていた頃の話である。

朝のラッシュ時間、駅のホームでは沢山の乗客が電車を待っていた。僕は珍しく列の前の方を確保できたので、今朝は座れるかもしれないなぁと期待した。

ホームに入ってきた電車が、やがて緩やかに停車してドアが開く。

すると、ウ〇コ座りをしてタバコを喫う3人のヤンキーが、出入口を塞いでいる姿が現れた。

乗客達がどうしようかと躊躇しているところへ、ホームの人影の中から屈強そうな1人の男がスタスタとヤンキー達に近づくや、1人のヤンキーの背中を思いっ切り蹴り飛ばした。

蹴られたヤンキーは大きく前に飛ばされて車内に俯せになって倒れ込む。

屈強な男は何食わぬ顔をしてそのまま電車に乗り込み、ヤンキー達をギロリと睨んだ。

ヤンキー達はビビってしまって何の反撃も出来ず、他の乗客と一緒にそそくさと電車から降りていった。

ホームに並んでいた我々は胸を撫で下ろし、安心して電車に乗り込んだ。

ピシッとドアが閉まると、電車はグウォーンと音をたてながら発車する。

乗客達は頼もしいヒーローに感謝と尊敬の視線を向けたのだが、体育の教師なのだろうか、40代くらいのその屈強な男性は、何事も無かったかのように吊革を握って立っていた。

今だったら傷害事件だなんだぁと言ってはすぐに騒ぎ立てるのかも知れない。

・・・・・・・

正義が正義として通っていた時代の話である。

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