No.607【ゴキル】

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ホタルは華麗で繊細な生き物である。

6月の初旬になると、里山の清流では可憐な舞いを見せてくれる。万人に最も愛されている昆虫だと思う。同じ昆虫なのに〈ゴキブリ〉とは大違いである。

しかし、ホタルだってひっくり返してお腹を見れば、〈ゴキブリ〉と大差ないのだ。

じゃあ〈ゴキブリ〉のお尻が光ったなら〈ホタル〉のように愛されるのかと言えば、光らないよりももっと気持ち悪がられるに違いない。

あの〈ゴキブリ〉がお尻を光らせながらゴソゴソと動き廻った挙げ句に、「ブ~~ン」と飛んで来る姿を想像しただけでも気分が悪くなるじゃないか。

お尻が光っても〈ゴキブリ〉は絶対に〈ホタル〉にはなれないのだ。

同じ昆虫に生まれてきたのに〈ホタル〉と〈ゴキブリ〉との待遇には天と地ほどの差があるのである。

おそらく、生物にはそれぞれに存在価値があるはずだ。けれども〈ゴキブリ〉に限って、その存在価値を認めたくない。

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