No.124【雛鳥】 Uncategorized X Facebook はてブ Pocket LINE コピー 2022.08.31 若かりし頃、友人が旅行に行くからというので、小鳥を暫く預かったことがある。それはジュウシマツで、まだ練り餌しか食べない雛鳥だった。寒い冬のことだった。預かったのは良かったのだが、雛鳥を世話するというのは、そんなに容易なことではなかった。まず餌を食べなかった。小さなスプンでは全く見向きもしないし、練り餌用の注射器でもダメだった。口移しでやっと食べてくれるようになった。友人の都合で結局1ヶ月近く預かっていたので、雛鳥は成鳥と見間違えるほどになっていた。もう可愛くて仕方がない存在になった。・・・・・・その日の朝は特に冷え込んでいた。ジュウシマツに朝の挨拶をしようと、保温用に掛けてあった毛布を鳥籠から外した。「❗️・・」ジュウシマツが鳥籠の下に落ちて固まっている!両足を丸く縮めて目を瞑っていて動かない!瞬間、顔から血の気が引いた。凍え死んでいたのだ。鳥籠からソッと取り出して手の平に乗せてみたが冷たくなって固まったままだ。私はジュウシマツが可哀想で可哀想で堪らなくなった。友人に咎められるかも、などという〈邪念〉は一切湧いてはこない。ただただジュウシマツが可哀想だった。鳥籠にソッと戻して、私は隣の部屋に行った。そこには〈神棚〉があるのだ。〈神棚〉に向かって祈った。生まれて初めて神様に祈った。《神様、神様がいらっしゃるものなら、どうかジュウシマツを救けてやって下さい。無理な願いだということは承知しています・・》無駄な祈りを終えてションボリとジュウシマツのいる部屋に戻った。「チュンチュン!チュン!」「❗️・・・」ジュウシマツは止まり木に止まって鳴いていた。・・・・数十年前の話だが、少しの濁りもない願いが神様に通じたのだと、私は今でもそう思っている。
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