No.155【途中降車】

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忘年会に出席した。会場が人気のあるシティホテルだったので、お酒も料理も抜群に旨かった。若さも手伝って、私はよく食べよく飲んだ。

スナックでの3次会が終わった時にはかなり酔いが回ってきていたし、もう終電が出た後だったので、少々高くつくのだが、已む無くタクシーで帰ることにした。
終電あとの歓楽街でのタクシーのゲットはちょっとした争奪戦になるのだが、なんとか乗ることが出来た。

・・・・・・・・・

暫く走ったころ、ちょっと気分が悪くなってきた。自宅までは小1時間は掛かる距離がある。まだ当分着きそうにない。

ところがドンドン気持ちが悪くなってきて吐き気まで催してきたのだ。冷たい水割りも呑み過ぎたせいか、お腹もグルグルいい始めたのだ。

〈ウゥ~これはヤバイぞっ❗️〉

普段になく自宅が遠く感じる。

〈お~いまだかよぉ~〉

吐きそうなのと下痢が洩れそうなのとがもう限界に近づいてきた。胃袋が波打つ嘔吐感と、大腸の、痛みを伴う強烈な排便感が交互に襲ってくるのだ。

〈あぁぁぁ~泣きそうだ~❗️〉

窓の外を睨むと、タクシーは自宅の下を通っている電車の線路に沿った道を走っている。もう少し先の踏切を山手に上がっていったところが自宅なのだが、口とお尻に限界がきた。

「運転手さん❗️ここでいいです❗️停めて下さい」
「お客さん、もうすぐそこですよ」
「いいんです❗️停めて下さい❗️降ろして下さい❗️」

タクシーは線路沿いのガードレールの横に停車し、私は料金を渡したらすぐにクルマを出た。車内から声がする。

「あっ!お客さん、お釣り!お釣り❗️」
「お釣りはいらないから取っといて下さい❗️」

悠長にお釣りを受け取ったりする余裕などないのだ。踏切まで歩いていたらアウトだ。ガードレールを乗り越え線路を跨いで建売住宅が建ち並ぶ斜面を歩くことにした。自宅までを斜め直線に歩いて距離を最短にするためだ。

だがもう完全に限界がきた。

〈どっか空き地がないか?❗️〉

けれども周りは住宅ばかりだ。

〈あっ❗️畑があるぞっ❗️〉

暗闇の中に小さな畑が見えた。私は覚悟を決めてスーツのズボンを下ろして畑にしゃがんだ、途端に物凄い勢いで上からは吐くは下からは出るわ・・・すると、こともあろうに、突然犬が吠え始めたのだ。

「ワンワンワン❗️ウゥゥゥ~ッワンワンワン❗️」

畑の上にある家の飼い犬だった。

〈わぁ~吠えるな~❗️人が出てくるじゃないか~❗️〉

私は苦しい中、中断を余儀無くされ、ズボンを上げるのも程々に、すぐにその場から逃げなければならなかった。

ティッシュを持っていたことだけがせめてもの救いだった。

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