
少年時代にはよく魚釣りをした。
その日は、友達と2人で〈鮒〉を釣りに行くことになった。2人で、釣竿やバケツや空缶などを準備していたら、近所に住んでいる1人の男の子がトコトコとやって来た。まだ小学2年生だ。
「おにいちゃん、ぼくもサカナつりにつれてって~」
「ダメダメ、こないだも退屈してすぐ帰る言うたじゃないか~」
その子はちょっと変わった子でもあったし、連れて行ったらまた足手まといになるのが分かっていたので、僕はそう言って追い返そうとした。
「こんどはいわんからつれてって~」
友達のほうを見ると、仕方がないなぁ、という顔をしながらも頷いているので連れて行くことにした。
池に行く前に、近くの田圃に寄って、餌にする〈シマミミズ〉を取らなければならない。畦道の下を掘るといっぱい出てくる。ものの5分程で、空缶がミミズでいっぱいになった。
田圃から山の手の方に少し歩くと、すぐに池に辿り着いた。はやる気持ちを押さえて、棹・糸・針・浮き・重りなどをセットし、針にミミズを付けて、2人は早速、釣り糸を垂らした。
・・・・・・・
小1時間も過ぎただろうか・・・
「お~い、今日は全然ダメじゃ~」
友達が溜め息混じりに言う。
「うん、全然当たりがないのぉ」
僕が気のない返事を返していると、案の定、連れてきた男の子がグズり始めた。
「おにいちゃん、ボク、腹が減った~」
《ほ~ら、やっぱり退屈になってきたんだ、食べる物なんかないぞ》
僕は連れてきたことを後悔しながら、水面の浮きに当たりがくるのをジッと待っていた。
「おい、お前ミミズを換え過ぎじゃないか~?」
友達が訝しげに話し掛けてきた。
「ミミズ~?餌の交換のことかぁ?さっきから3回くらいしか換えてないぞ」
「じゃぁ1回に何匹も針に付けとるんじゃろう?」
「はぁ~?1匹しか付けるわけないじゃろ、いっぱい付けたらええっちゅうもんじゃないし・・どうしたん?」
「ウン、それがのぉ、缶の中のミミズの減りが早いんじゃ・・・」
「えぇ~?そりゃぁおかしいのぉ・・・」
そう言いながら餌を取り換えようと、餌が入っている空缶に手を伸ばした時、缶の前に座って口をモゴモゴしている男の子が目に入った。
「❗️・・・お前っ!口を開けてみぃっ❗️」
開けた口の中はミミズでいっぱいだった。男の子はミミズを喰っていたのだ。
「おーいっ❗️コイツ、ミミズ喰っとるでぇ!コラッ!吐き出せっ❗️」
「ええっ❗️」
友達も驚いて、魚釣りどころではなくなったのだった。
どうりで早く餌が減っていたはずだ。結局その日は〈小学2年の男の子〉が1人釣れただけで、〈鮒〉は1匹も釣れなかった。
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