No.219【野球観戦】

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勤務しているホテルの仕事仲間で〈ナイター〉を観に行こうということになった。15・6人はすぐに集まった。急な話だったのだが、外野席ならまだチケットが買えるみたいだった。
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試合当日がやってきた。その日のナイターは、東京の人気球団が対戦相手ということで、その地方球団のホーム球場は、ほぼ満席になっていた。
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やがてプレイボールの声とともに試合が始まったのだが、その日の地元チームは取り分け投打のバランスが良く、回が進むにつれて点数を積み上げていった。我々は〈来た甲斐があった〉と、大いに盛り上がったのだった。

ところが、その中に1人だけ浮かぬ顔をしている男がいた。実はソイツは東京からこちらに出向いているヤツで、当然、東京のチームの熱烈なファンなのだった。彼にとっては完全にアウェーの球場なのに加えて贔屓のチームがボロ負けしているので苛ついていたのだ。

彼がトイレに立って、トランペットや太鼓で賑やかな地元応援団の側を通った時だ。荒っぽい性格の彼は応援団に向けて思いっ切り啖呵を切ってしまったのだった。

「手メェらぁさっきからウルセーんだよ❗️バカヤローッ❗️」

「なんじゃとーっ❗️オドれーっ❗️」

団長らしき男がすっ飛んできて取っ組み合いの喧嘩になってしまったのだった。他の応援団の連中も加勢してくる。我々もすぐに助っ人に入ったので、忽ちのうちに何十人かが揉み合う大乱闘になってしまった。辺りからは傘が飛んでくる、熱い出汁と一緒にウドンも飛んでくる。

「あっちーっ❗️」

「おらぁ~~っ❗️」

怒声が飛び交う修羅場となった。

やがて数人の警備員がやってきて騒ぎを鎮めようとするのだが、多勢に無勢で埒が明かない。余りの騒動にグラウンドのプレーが一時中断されてしまった。外野守備の選手も呆れて見ている。
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乱闘は数分も続いただろうか・・なんとか落ち着いて試合が再開されたのだが、警備員はそのままそこに待機していて、我々は監視されることを余儀無くされたのである。
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あくる日、仕事場はその話で持ち切りになっていた。

「あの乱闘、お前らだったんかいっ❗️」

「なにやってんだよ!」

「テレビ中継で乱闘シーンが映ったんだぞっ!」

「試合を中断させやがって!プロ野球ニュースでもやってたわ、なにか外野席で乱闘騒ぎのようですってアナウンサーが言ってたぞ!んで、ズームアップで映ってたわぃ❗️」

とんだ野球観戦になってしまった。
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辛うじて警察沙汰にはならなかったので、社名が世間に晒されることはなく、始末書を書くことも免れたのが幸いと言えば幸いであった。

もう、随分むかしの話である。

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