No.246【クラウンアスリート】

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知人が長年の夢だった〈クラウン〉を買った。

ピカピカの新車でコンビニに立ち寄った時に、タバコを買うだけだからだと思って、エンジンを掛けたまま店に入った。

アッという間だった。何者かが乗り込んだクラウンはサーッ!と駐車場から出ていった。

〈クラウン2.5アスリート〉は、僅か1ヶ月で彼のもとから消え去ってしまった。

・・・・・・・

「そういえば、不審なクルマにつけられていたように思う」

と、彼は言う。

直ぐに盗難届けを出してはみたものの、警察の反応も期待出来るものではなかった。プロの窃盗団に掛かると直ぐに外国に流すので足が付き難いというのだ。

彼の落ち込みようといったら尋常ではなかった。それが原因で夫婦喧嘩にもなったようだ。掛ける言葉も無かった。

ただ、クラウンには車両保険が掛けられていたので、新車価格とまではいかないが、かなりの保険金が支払われた。それが幸いといえば幸いだった。

その保険金をもとにして、彼は〈アリスト3.0V300ツインターボ〉を買い、憂さを晴らすようにカッ飛ばすのだった。

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